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科学の方法 戸田山和久「科学哲学の冒険」  [文化]

社会学とかの分野で、社会構成主義とか構築主義という方法論があります。
要約すれば以下のような考え方です。

”社会的な事実や人々の性質とされているものは
実は歴史的、社会的、文化的に作り出されてきたものという考え方”

民族、人種、ジェンダーなどに適用されているいろんな既成概念を
ホントは本質的できはないんじゃないか?
生まれながらではないんじゃないか?
と疑うところから始めます。

日本人は桜が好き とか
女の子はおしとやか とか
神秘の国・日本? とか

既成事実と思われていることを白黒はっきりさせるというより、
なぜそう思うようになったのだろう?
と考えます。

”あたりまえじゃん”を疑う、
そんなラディカルな考え方が結構好きです。

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そんな社会構成主義は
実は自然科学(サイエンス)にまで及んでいます。

社会構成主義者(科学知識社会学者という)が科学を扱うと、
例えば”科学的事実(規則とか法則とか)はすべて社会的な構成物で、
人間の認識から独立した世界の規則とか法則のようなものは存在しない”
となったりします。

科学的活動とは、
 人間のまだ知らない世界の秩序を発見する活動
ではなくて、
 科学者共同体での社会的合意をつくる活動 (秩序なんてないよ)
となってしまいます。

うむむむむ。。。。。

またしても、当たり前だと思ってたことが疑われたわけですが、
今回は個人的には受け入れがたい、、、
大学では自然科学を専攻していただけに、、、

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一部科学知識社会学者の主張は、ラディカルすぎな面もあり、
活動に業を煮やした一部科学者側と、
ひと悶着あったりしました。
「サイエンス・ウォーズ」とか「ソーカルのでっちあげ」とか呼ばれ、
結構話題になりました。

ソーカル事件 (結構、野次馬的に面白い事件です)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%AB%E4%BA%8B%E4%BB%B6

詳しくは以下の本となります。

科学知識社会学者の立場から

サイエンス・ウォーズ

サイエンス・ウォーズ

  • 作者: 金森 修
  • 出版社/メーカー: 東京大学出版会
  • 発売日: 2000/07
  • メディア: 単行本


科学者からはソーカルさんご本人の本

「知」の欺瞞―ポストモダン思想における科学の濫用

「知」の欺瞞―ポストモダン思想における科学の濫用

  • 作者: 田崎 晴明, 大野 克嗣, 堀 茂樹, アラン・ソーカル, ジャン・ブリクモン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2000/05
  • メディア: 単行本

(必ず2冊まとめて読まれたほうがいいかと)

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結局、科学者達は科学知識社会学者の主張に違和感を覚えながら、
科学者側に彼らの主張に対抗するような
自分の活動を表現する言葉を持ってなかったのも事実のようで、、、
かみ合わないような、未消化なもやもやした印象がやや残ります。
(ぼくが読んだ上記2冊のみからの印象ですが、、、)
ぼくのもやもやをどうにかして~。

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すっかり前置きが長くなりましたが、
ぼくのもやもやを消してくれるような本を見つけました。

最近読んだ、戸田山和久さんの「科学哲学の冒険」では、
科学の真理は社会的構成物だという考え方なども含め、
科学に対する様々な考え方の特徴と違いをきちんと整理したうえで、
自然科学の方法論が世界を正しく捉えているようだという直感を擁護する考え方
を紹介しています。

科学が世界を正しく捉えていそうという”当たり前”を疑った上で、
改めてその”当たり前”を主張することの難しさは想像以上のものです。
一度、本書を頼りにそんな思考の軌跡を辿ってみられてはと思います。
特に、自然科学を学んでいる(いた)方は。

科学哲学の冒険―サイエンスの目的と方法をさぐる

科学哲学の冒険―サイエンスの目的と方法をさぐる

  • 作者: 戸田山 和久
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2005/01
  • メディア: 単行本

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戸田山先生さんは、
大学の教養時代に論理学と哲学を習った先生なのでした。
センスよく楽しい授業が人気でしたが、
本でもみごと再現されていて、
新刊が出る毎に買ってます。
よろしかったら。

戸田山先生のHP http://www.h4.dion.ne.jp/~fmakiba/todayamas.htm

論理学の本

論理学をつくる

論理学をつくる

  • 作者: 戸田山 和久
  • 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会
  • 発売日: 2000/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

”知っている”ていうことがこんなに大変なんて

知識の哲学

知識の哲学

  • 作者: 戸田山 和久
  • 出版社/メーカー: 産業図書
  • 発売日: 2002/06
  • メディア: 単行本

”作文ヘタ夫”くんが主人公の論文の書き方本

論文の教室―レポートから卒論まで

論文の教室―レポートから卒論まで

  • 作者: 戸田山 和久
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2002/11
  • メディア: 単行本


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