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「ル・コルビュジェ展」 建築とアート [建築]

森美術館で開催された「ル・コルビュジェ展」は
ル・コルビュジェの建築だけでなく絵画や彫刻も
多数紹介されているのが特徴でした。
ル・コルビュジェの絵画や彫刻が見たくって、
ぼくも行ってきました。

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建築とアートの関わりでいえば、
バウハウスには建築家ミース・ファン・デル・ローエなどとともに
画家のカディンスキーやクレーもいましたし、
デ・スティルには建築作品も残すリートフェルトとともに
画家のモンドリアンがいました。
カディンスキーやモンドリアンはいわゆる抽象絵画の巨匠で、
モダンな建築と抽象画は確かにお似合いな気がします。

では、ル・コルビュジェの絵画作品はといえば、
意外にもキュビズム風の絵画ばかりです。
キュビズムは静物画を出発点としているので、
必ず何か対象物を描いていますが、
ル・コルビュジェの作品も
「赤いバイオリンのある静物」や「女と雀」のように
対象物が描かれているものばかりです。
対象物のない抽象画ではなく対象物のある絵画という点は
先の建築とアートの関係とは異なるル・コルビュジェの特徴だと思います。

ル・コルビュジェは「キュビズム以降」という本で、
自分の芸術をピュリズム(純粋主義)と呼びました。
そこでは、秩序や明快さのある理性によって
自然や現実の再現を追求することを宣言しています。
ピュリズムにおける単純さの探求や装飾性の排除の試みは
抽象画にも通じるものがありますが、
あくまで自然や現実の再現を目指している点は、
抽象画と大きく異なります。


「赤いバイオリンのある静物」

以上を踏まえて、改めてル・コルビュジェの建築を見てみると、
絵画や彫刻でみせた現実の再現へのこだわりが
ル・コルビュジェの建築にも感じられる気がします。

例えばミース・ファン・デル・ローエの建築は
モンドリアンの絵画のように
水平線や垂直線を構成していきながら作られたように感じますが、
ル・コルビュジェの建築は
むしろ自然や現実のものの装飾を排除しながら単純化する試みのなかで生まれた形
が随所に見受けられる気がします。

同じ単純明快さの表現でも
水平線と垂直線のような単純な要素の集合体として構成していく手法と、
一見複雑な自然や現実の本質を掴むことで無駄な装飾を排除し単純化していく手法では
大きく異なりますが、
ル・コルビュジェは後者だったような気がします。
ロンシャンの礼拝堂などもそう考えたほうがすんなりきます。

そんなル・コルビュジェの現実の再現へのこだわりは
例えば人体寸法や黄金比率といったモデュロールの考え方にもつながっている気がします。

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国立新美術館で開催された「20世紀美術探訪」展で
ル・コルビュジェの作品がバウハウスや構成主義、構築主義などのコーナーから遠く離れて、
キュビズムのコーナーにあったのが気になっていたのですが、
今回の展覧会でその違いを再度感じることができたような気がします。

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「ル・コルビュジェ展」@森美術館
2007/05/26-2007/09/24
http://www.mori.art.museum/contents/lc/index.html


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