様式vsモダニズム 井上章一「つくられた桂離宮神話」 [文化]
桂離宮のミニマルで無駄を排した建築が
モダニズムの観点で高い評価を得ています。
特に昭和初期のブルーノ・タウトによる桂離宮の「発見」以来。
時に、茶の世界や禅の世界を引き合いにだしながら、
日本人はもともと簡素なものを好むモダニズムの精神を持っている的な議論もあったりします。
一方で、日光東照宮の装飾過多な建築を
”日本らしくなくて嫌い”という人がいます。
曰く、大陸の文化の影響が感じられて日本らしくないとか、、、
でも井上章一さんの本によれば、
明治初頭の頃は、東照宮の装飾美が、
むしろ品格のある日本人的なものと思われていたようです。
そもそも、茶の湯や禅の世界だけで日本人を語れるでしょうか、
日本にはもっと多様な世界が存在していそうです。
どちらが日本人ではなくどちらも日本人というしかなさそうです。
いろんな時代背景の影響もあって、
東照宮的様式が好まれたり、桂離宮的簡素が好まれたりするわけですが、
一度、心をまっさらにしてみると、自分の好みの足元が不安になります。
様式が好きとか、モダンが好きとか、
人には好みがどうしてもあるわけですが、
一方でその理由を聞かれると困ってしまいます。
安易に日本人は昔から好きなんだって自分を納得させてしまいがちなんですが、
実はそれって何も語ってないのと同じだったりします。
変な先入観で自分の世界を閉じ込めるのをやめてみると、
いろんな「発見」がありそうです。
先入観のない外国人の評判が日本に逆輸入され
初めて日本人が気づくなんてこともあったりしますし、、、
(桂離宮もタウトによって発見された影響大きいです)
難しいんだけど、そんな先入観をなくしていろんなものに接していきたいと思っています。
初期構想の愛知万博 原研哉「デザインのデザイン」 [文化]
デザイナー原研哉さんの「デザインのデザイン」という本を読んで、
いろいろ感心させられます。
ゆるぎない考えをお持ちの方だなぁと思いました。
流行とか評判とか時代とかに左右されない安心感を強く感じます。
流行ほど危うくもろいものってないですよね。
デザインって流行にのっかることじゃなくて、
本質に潜む美を表現することなのでしょうね。
(むずかしくはてしない旅なのでしょうが、、、)
ところで、原研哉さんは初期構想時の愛知万博に
アートディレクターとして関わっていました。
「デザインのデザイン」では1章を使って、
初期構想時の愛知万博について語っています。
紆余曲折の末辿りついた愛知万博の初期の姿は、、、
是非読んでみられることをお勧めします。
これから愛・地球博に行かれる方は特に。
原デザイン研究所 http://www.ndc.co.jp/hara/
レヴィ=ストロースさんの記事 [文化]
朝日新聞にレヴィ=ストロースさんの記事が載ってました。
現代思想の大御所の中で今でも生きておられるのは、
もうレヴィ=ストロースさんだけでしょうか?
現在96歳です。
近年の世界開発と人口増加には違和感を感じておられるようで、
「私が愛した世界は15億の人口だった。
60億人が暮らす今の世界は、もはや私とは無縁の世界です。」
と語り、現代についてのコメントを放棄されています。
そんなこと言わず、いろいろ語って欲しいものです。
レヴィ=ストロースさんの思考は、現在でも(現在こそ?)有効だと思います。
「まほちゃんち」展 [文化]
11月末水戸に行ったときに
ぶらり立ち寄った水戸芸術館の「まほちゃんち」展
そこで待っていたのは、、、
島尾伸三、潮田登久子夫妻とその娘しまおまほの三人展でした。
伸三氏は「死の棘」の島尾敏雄、ミホ夫妻の息子なんだそうです!
実は、、、島尾敏雄夫妻しか知らなかったんですが、、、
有名なアーティスト一家だったんですね、、、すみません
みなさん知ってました?
会場は伸三・登久子両氏の写真、
ご夫妻収集の中国雑貨、ご家族の思い出の品々など
自分には気づかない視点にあふれたモノモノモノ。
島尾一家のもつセンスを一緒に楽しめる内容でした。
帰りには「しまおまほのひとりオリーブ調査隊」(サイン付)を購入しました。
ご先祖譲りの生活に根ざした視線は健在。
身の回りのおかしな調査を一人敢行した名著となっております。
情報 : 「まほちゃんち」は水戸芸術館にて1/10まで。
水戸芸術館の設計は磯崎新。建築好きな方も是非に。
usimaoda http://www.catnet.ne.jp/usimaoda/one_more/
水戸芸術館 http://www.arttowermito.or.jp/atm-j.html