「マイクロポップの時代:夏への扉」展 [現代美術]
美術評論家の松井みどりさんの待望の著作「マイクロポップの時代:夏への扉」が発売されました。
それに合わせて、水戸芸術館で展覧会も開催中です。
1960年代終わりから1970年代に生まれたアーティストを中心とした15人の作家による展示。
一見、書きなぐった落書きのようにも見えるドローイングや
日常のちょっとした発見を捉えた写真や映像作品は、
伝統的な芸術とはなんだか異なり、
これがアートなの?という言葉が聞こえてきそうです。
一方で、従来のアートにはない魅力があるのも事実です。
これらの作品は、
技術の披露のみを目的としたアートではなく、
自己の内面の表現に主眼があるように見えます。
さらにいえば、これらの表現はけっして自己満足的なものではなく、
観客との”共感”を求めるような作品に見えます。
周りがよいというものあわせるのではなく、
自分がよいと思うものに共感してくれる人を探す表現としてのアート、
そんな感じがします。
この”共感”をよりどころにすれば、
観客も作品を受動的に受けるのではなく、
作品を作者とともに創造的に受け止めることも可能となり、
作品内部に開かれた無限の世界を共に楽しむことができるような気がします。
表面的な技術に目を奪われて、
内部に広がる広大な世界に気づかないのはもったいない、
かもしれません。
松井みどりさんのマイクロポップ宣言を読んで、
夏への扉を開けましょう。
http://www.natsuenotobira.com/
「マイクロポップの時代:夏への扉」展@水戸芸術館
2007/2/3-5/6
出展作家:奈良美智、杉戸洋、落合多武、有馬かおる、青木綾子、タカノ綾、國方真秀未、島袋道浩、野口里佳、半田真規、森千裕、田中功起、K.K.、大木裕之、泉太郎
水戸芸術館 http://www.arttowermito.or.jp/natsutobira/natsutobiraj.html
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最近、今更ながら読んだ岡倉天心の「茶の本」に
”われわれの心に訴えるものは、
技量というよりは精神であり、
技術というより人物である”
という言葉があり、
芸術という言葉のなかった千利休の時代から、
芸術とは見た目ではなくその内部に含まれた深遠な世界なのだと、
改めて認識しました。
階級の無化、”マイナー”に向けるまなざし、日常、見立て、他力、、、
千利休の前衛さはマイクロポップに通じるキーワードが多い気がしました。